私は実験音楽とサウンド・アートを軸に、研究を基にした領域横断的な作品制作をしている。作品形態は音楽、パフォーマンス、展示など異なるが、根底にあるのは「歴史/アーカイブの中で沈黙させられてきた(女性の)声に焦点を当て、その背景を探るとともに、遊戯的な方法で代替可能性を提示する」というコンセプトだ。過去の出来事、その記録、記録を基にした出来事の再上演という関係を出発点に、「過去に実際に起こったこと」と「真実として記述されるもの」の間に介在する差異、主観、権力、偏見、欲望などの枠組みを照射し、かき消された部分を可視(聴)化する。近作では、オノ・ヨーコなどのアーティストの過去作品の記録を元に、残されなかったこと、もの、音を想像し、現代の文脈で再創造するという試みをおこなっている。また、作品制作におけるテーマは、実験音楽、サウンド・アートの歴史的位置づけの検討という異なる位相でも展開している。リニアな歴史をもたないこれらの周辺的なジャンルにおいて、自作品がどのように位置づけられうるのか、学術的研究を通して探求している。
2018年11月